科学博物館で夏休みの人集めに、子供用の参加行事を考えることになった。こういうとき植物は、目玉になるものがなくて困る。何の用意もなくやってくる子供を相手に、30分程度で持って帰れる物を作らせることを考えねばならない。ある年、笹舟を作らせたら、というプランが出た。これならササやヨシの葉をたくさん用意しておけば、いくらでもおみやげができるし、金もかからない。ヨシは自然教育園や筑波の実験植物園に生えているのを使えばよいし、束にして水に生けておけば手間はかからない…というわけで、供給を依頼した。ところが、「せっかく水辺の景観維持のために植えてあるのに、何百枚もの葉を持って行かれたら台なしだ…」ということで、良い顔をされなかった。それでも頼み込んではじめの何日分かの葉を確保した。しかしこれだけでは期間中の量には足りないので、料理用やちまき用に笹の葉を供給しているという福島県の人にお願いして、送ってもらうことにした。
初日の前日、送られてきたヨシの茎をバケツの水にさし、翌日に備えた。翌朝、会場に行ってみると、ヨシの葉はあまり元気がなく、丸まりかけているものが多かった。水揚げが悪いのだ。朝になってから到着した材料もあったので、それらを使って笹舟をいくつも作り、水盤に浮かべておいた。
いよいよ開場となって子供たちがやって来た。彼らは笹舟の作り方を知らない。葉の端を折って3つに裂いて、両側の裂片を組み合わせるとき、裂きすぎるうえ、引っ張りすぎてしまう。ついて来た親も、作り方を知っている者は少なかった。ともかく形ができて、水盤に浮かべようと見たら、今朝作った笹舟のほとんどが水舟になっていて、びっくりした。子供のとき、近くの小川で笹舟を流して遊んでいたが、みんな流れて行ってしまうので、1時間やそこらで沈没してしまうとは知らなかった。幸いにも、子供たちはいろんな会場をハシゴするから、ちょっと浮かべてみてあとは早々に引き取って行くので、バレずに済んだ。家に帰った頃には、笹舟は丸まってしまい、風呂に入れてもまともには浮かばなかったろう。これでは自由研究の作品には出せない。親に「大事にしまってこなかったのがいけない」と叱られたにちがいない。
2日目になったら、バケツにさしたヨシの葉はますます丸くなり、乾いてきた。裂いたり折ったりするとパリンといってしまう。水をかければ一応柔らかくなるが、これで作った笹舟ははじめから沈没してしまう。朝一番に着いたヨシの葉でしのいだ。
3日目に、福島から笹の葉が到着した。木の浅い桶に笹の葉が扇状に重ねられ、鮮度を保つために水が振ってある。大きな立派な笹の葉だが、これもはじめから沈没請け合いである。あわてて公園内のクマザサの葉を集めることになった。翌日から出勤前に近所の丘に行って、笹の葉を集めるのが日課になった。ササもヨシと同じで、バケツに生けておいても、翌日には葉が丸まってしまう。ササで作った笹舟も、しばらく浮かべると沈没してしまうのである。観察の時間幅でこうも大きな違いがあるとは思わなかった。野外の遊びを室内で再現するのは、意外とむつかしい。
[野草72(529):29-31(2007)]
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