Dr. K. IWATSUKI Received the Duke of the Edinburgh Prize
本誌編集委員岩槻邦男氏は、このたび1994年度日本学士院エジンバラ公賞を贈られた。
この賞は日本学士院賞と同等のもので、野生生物保護基金(WWF)総裁のエジンバラ公を記念し、自然保護と種の保全に関する優れた研究に対して与えられる。同氏の『植物の多様性の解析およびその滅失に関する保全生物学的研究』が受賞の対象とされ、6月6日に受賞式がおこなわれた。植物分類学の研究がこのような方面から評価され、しかも本賞はこれが第1回であることを考えるとその意義は大きく、基本的と言われながらとかく見過ごされがちな、分類学の仕事に光を当ててくれた同氏の業績にあらためて拍手をおくりたい。
岩槻氏は東大植物園就任以来、同園の経営改善に力を注いだばかりでなく、絶滅危惧植物のハハジマノボタンやヒスイカズラの種保全研究をリードして、植物園が遺伝子保存事業に積極的に関与する見本を示した。環境庁の野生生物調査事業にも、座長として調整・とりまとめに奔走している。その成果の1つである『我が国における保護上重要な植物の現状』(1989)は、日本植物の危機的現状をはじめて知らしめたものとして、世にショックを与えた。これに続いて公表された著書『日本絶滅危惧植物』(1990)、『植物からの警告』(1994)などは、この衝撃をあらためて広く定着させ、従来の「保護」という立場から踏み出して、自然界における種の多様性の役割を、分類学の立場から一般に理解してもらうことを意図している。
植物分類学の人は、世間的に目立とうとしないのを美学とする傾向がある。京都大学時代の岩槻氏を思うと、近年の活躍ぶりは思いのほかであるが。6月20日のお祝いの会で同氏が語ったところでは、植物園就任に当たって、種の保全についての園の役割をPRするために、積極的に動くことを決意したとのことである。今回の受賞はその成果であるばかりでなく、分類学の役割を「種の多様性」という、これまで無かった観点から世に定着させた功績は、記憶されるべきである。
[植物研究雑誌69(4):240-241(1994)]
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