A new portable plant drier
東京大学ヒマラヤ植物調査隊が、1960年および1963年に使用した乾燥器について紹介する。
冨樫板(Togashi’s Grid)
従来用いられているジュラルミン波板は、一枚板であるために太い枝や果実の周辺に広い加庄不能の部分ができる。また多肉な標本の場合にはいちじるしい凹凸ができる。冨樫板は武田薬品工業の冨樫誠氏の考案したもので、特殊な形に曲げて作ったジュラルミンの角パイプをピアノ線ですだれ状に編んであり、前記ジェラルミン板の欠点を補うと共に、急速に乾燥させるために通気性を良くさせてある(Fig.1、3)。一方欠点は、加工が複雑なために商業ベースでの製作の引受け手がなく、作ったとしても非常に高価であること、ジェラルミン波板にくらべて使用しない時の体積がずっと大きいこと、ピアノ線の端が互にからみ合って扱い難いこと、などである。
![]()
Fig.1Togashi's Grid
![]()
Fig.3Togashi's Grid (Part).
A. Unit Pipe. / B. Spacer. /
C. Piano Wire. (size in mm)加圧法(Pressing method)
冨樫板に採集品をはさみ、火力乾燥を行なうが、その際標本が収縮するのでバネを用いて常に圧力がかかるようにする。次の二通りの方法を用いた。いずれもバネが熱でなまらないようその位置を考慮してある。
A. 粋式 Fig.4のようなコの字形の枠につけた遊動アングルA2の下に冨樫板にはさんだ標本を置き、上から押し下げながらアングルA1をネジBで固定する(Fig.5)。枠式の長所は,一度固定が終ればあとは相当乱暴に扱っても崩れるおそれがないことである。欠点は、あまり多量の標本を処理できないこと、A2より上の部分が乾燥の際横に突出るので取扱いに不便な場合があること、標本をよく揃えておかないと枠内へ入れるのに手間がかかること、などであるが、次にのべる方法より取扱いが容易で安全である。
B. 長バネ式 Fig.6のように標本全体を長いバネで巻締める。バネの両端はフックになっていて、端板にある引掛け穴に固定する。この方法は上述のバネ式の欠点をすべてカバーしているが、締めつけたり運んだりする際にバランスをうまくとらないと、枠が無いために中央からふくれ出して崩れてしまうのが欠点である。加熱中に標本の収縮によっても崩れることがある。
加熱法(Drying method)
Fig.2に見られるような鉄製の台にのせて加熱したが、石などを組んでもよい。次の二とおりの方法を用いた。
A. 石油バーナーによる法(Fig.2) 台の高さは大形のバーナーが下に入るように作ってある。焰が直接当ると発火するので、細かい穴を開けた真鍮板(A)をのせて使用した。図では2個のバーナーを使っているが、通常は1セットにつき大形1個、中形3個を使用した。
B. 炭火による法 たき火をたいて「おき」を作り、これを台の下に敷きつめて加熱する。この方がAにくらべて加熱が一様であり、火加減がし易く、速くて安上りである。
標本製作中の注意と標本の出来具合(Treatment and condition of specimens)
採集品は新聞紙にはさんでそのまま重ねて紐でしばり、半日乃至1日放置した後、開いて姿勢を直してから冨樫坂にはさむ。これは主としで仕上りの美しさ、利用のし易さのためである。種類によって乾き方が異なるから、時々開いて乾いたものを取出し、配列を変えたり上下を逆にしたりして乾き易いようにする。太い枝などがあって通気のよい部分は、そこだけ早く乾いて発火するから注意を要する。乾燥器を使えるのは行軍中は通常午後4時以降であったが、乾かしはじめてから4日日には、多肉なもの以外はほとんど乾いてしまう。イネ科植物などでは夕方からかかって翌朝には乾いてしまうものもあった。出来上った標本は、利用する側から見ればいろいろ欠点がある。主なものは:1. 標本全体が黒味がかってもろくなる。2. 花などの色は失われる。3. ロウ質や精油分がとけたり変質したりする。4. 高温乾燥した標本は煮ても元に戻らず、解剖観察に使えないという人もある。5. 胞子、種子、花粉などは死んでしまうので、別にとっておく必要がある。これらはいずれも、我々の行動が連日の移動と限られた人夫の数という制約の下で、採集品をできるだけ早く軽くすることを要求された結果で、この種の調査旅行ではある程度やむを得ないことと思う。冨樫板約100枚、プレス4セットを用いて2カ月間で約5万点の標本を乾かした。この点からみると、この乾燥器は野外用として能率が良いものといえるだろう。
研究室での使用法(Laboratory use)
室内や日本国内の野外での標本乾燥に冨樫板を使用する必要はない。それよりはジュラルミン波板の方がかさばらないし安上りである。枠式や長バネ式の加圧法は野外において有用である。従来の吸温紙を交換する方法に代わって、ジュラルミン波板に標本をはさんで電熱器の上にのせる方法が最近行なわれるようになった。その際最初にのべたジュラルミン波板の欠点を補うためには、ポリウレタンスポンジのシートを用いるとよい。つまり、ジュラ板、標本、スポンジ、標本、ジュラ板という順序に重ねて行くのである。太い枝や根などのために加圧が不均一になる部分には、スポンジを更に局部的に入れる。加熱はポリウレタンが変性しない程度にする。従って加圧にはバネの代りにゴム紐でしばるのが簡単である。通風装置があれば一層有効である。筆者の経験では通風装置なしで50℃に放置して、約5日間で乾く。標本の作り方も人によっていろいろ工夫されていると思うので、公開していただきたいものである。
なお、冨樫板およびそれを用いたさく葉製作法については武田薬品工業株式会社が下記の特許権を所有していることを附記する。
- さく葉作製法Jap.Pat.436845、Fig.2286 さく葉製作乾燥板
- Jap.Pat.442857、Fig.2547
[植物研究雑誌41(4):123-126(1966)]注)本書収蔵にあたりRésuméは割愛した。
=休業日
土曜・日曜・祝日・GW休暇・夏季休暇・冬季休暇(年末年始)
アボック社は(一社)日本公園施設業協会の審査を経て「公園施設/遊具の安全に関する規準JPFA-SP-S:2024 」に準拠した安全な公園施設の設計・製造・販売・施工・点検・修繕を行う企業として認定されています。
© 2000- Aboc Co., Ltd.