普通な植物の分布を調べるため、地域研究者にお願いして、植物名を指定して県別の分布調査をしています。回収した調査表を見ているうちに、ヌルデとネムノキが同じ地点で記録されるケースが多いことに気付きました。自分で調査するときにも、ヌルデを見つけるとそこらにネムノキがないかと探すようになり、実際見つけることが多いのです。調査票のデータは分布図を作るためにパソコンに入っているので、その中からヌルデとネムノキをとり出し、両方とも産する地点をかぞえれば、どのくらい仲よしかわかるはずです。ついでに片方しかなかった地点数も調べれば、どのくらい仲が悪い?かもわかります。結果は下のようになりました。この数は宮城、福井、岐阜、愛知、奈良、兵庫、岡山県の調査から得たものです。
共通の地点 単独の地点 合計 全地点数 ヌルデ 1,156 640 1,796 2,085 ネムノキ 1,156 289 1,445 なお、ここで「地点」というのは、それぞれの記録者が「一箇所」として調査票に記入し、20万図上に×印など一つのマークとして表現したものです。私の場合には、自分の立った位置から道ぞいの前後方にそれぞれ約10歩動く間に見わたせる範囲です。
宮脇・奥田(1978)日本埴生便覧によると、ヌルデはクサギ-アカメガシワ群団の表徴種となっていますが、ネムノキは所属生態系名が記されていません。ネムノキは生態的には場所があまり定まらないのでしょうか。それにしてもこの数字は、ヌルデとネムノキの仲のよさを暗示するように思います。ついでに、この二種はどうやって散布するのでしょうか?ヌルデには外側に味のある部分がありますので、動物が食べることによる散布が考えられますが、ネムノキは種子そのものなので、ちょっと考えにくいです。それよりも、小動物が食用に運んで貯蔵したものが生き残ると考えるほうがもっともらしく思います。ネムノキは本州の北部まで、ヌルデは北海道の南西部まで分布しています。
[野草67(457):7-8(1994)]
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